■富士山の神霊が降臨する磐境
富士山本宮浅間大社は、富士山の山頂に奥宮、
富士宮市街地に本宮があり、本宮より5キロほど
上った標高380メートルのところに山宮がある。
本宮から山宮に向かうと、富士山に近づいている
という実感がする。山宮とよばれる由縁だろう。
山宮は富士山を神体として祀る「浅間信仰」の原
初の姿を留める貴重な神社とされ、市街地にある
本宮を里宮といい、山宮と区別してよばれている。
(『磐座百選』より一部抜粋)
■井伊家発祥の地に眠っていた磐座
1989年3月5日、朝刊各紙に
「古墳時代の巨石祭祀、静岡で発見」という記事
が載った。
遺跡が発見されたのは、渭伊神社本殿の裏山。
岩石は露出した自然石のチャート。巨石は頂
部にあり、一つは高さ7メートル、長辺11
メートル、短辺六6メートルで、もう一つは高
さ5メートル、6メートル四方の大きさ。こ
の周辺に1~2メートルの中小の岩が散在。
巨石の写真とともに、「大岩などを神霊が宿り、
神が鎮座する石座として祭った、古代の祭祀をう
かがい知る全国でも有数な遺跡として注目されて
いる」とあり、古墳時代中期末から同後期前葉の
巨石祭祀遺跡と紹介されている。
所在地は浜松市北区引佐町井伊谷字天白 。
字名をとって「天白磐座」とよばれている。井伊谷は、
井伊谷川と神宮寺川に挟まれた、文字通り「井伊
の谷」ともいえる小盆地だ。遺跡は盆地の西寄り、渭伊
神社境内にひっそりとたたずみ、忘れられて
いた。井伊谷川と神宮寺川は、南東1キロほどで
合流して井伊谷川となり、さらに22.5キロほど
下流で 都田川とともに浜名湖に流入する。地名
から推測できるとおり、豪族井伊氏の本拠地だっ
たところだ。この井伊氏がのち徳川家譜代の彦根
藩主となる。
(『磐座百選』より一部抜粋)
■伊豆諸島の神が依りつく大明神岩
伊豆急下田駅から温泉街をぬけ、東伊豆道路を
相模灘に沿って北上すると、白浜海岸が見えてく
る。海岸の先に、緑に覆われた岬のような台地が
見える。この台地に白濱神社が鎮座している。神
名帳に「伊古奈比咩命 (いこなひめのみこと)
神社」とあるが、白濱神社と通称されている。
主祭神は伊古奈比咩で、相殿に三嶋大神を祀る。
台地の先端には「大明神岩」とよばれる巨大な
岩礁があり、伊豆諸島に向かって赤い鳥居が立っ
ている。岩礁の手前は切り立った断崖で、かつて
崖下には「御釜」とよばれる巨大な岩穴が口を開
け、海蝕洞を通じて海水が流れ込んでいたという
が、崖が崩落して半ば埋もれてしまった。現在、
御釜は柵がしてあり、海水を湛えた神秘的な姿を
見ることはできない。
(『磐座百選』より一部抜粋)